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一倉 宏

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2010/01/21 (木)
世界文学「書き出し」名作集

どこかの出版社で、そういう本をつくってくれないかな。
世界文学から集めた「つかみ」の名作集。
ありそうでなさそうなのは、権利関係とかややこしいから、かしら。

私たちの世代で人気のあった、有名な「書き出し」といえば、

  ぼくは二十歳だった。
  それが人生で最も美しいときだとは誰にも言わせない。

           ポール・ニザン『アデン アラビア』

それから、こんなのにやられた若者も多かった。
          
  きれいな女の子との恋愛と、デューク・エリントンの音楽。
  それ以外のものは消えてしまっていい。醜いからだ。

           ボリス・ヴィアン『日々の泡』

この青春文学の文体というか、匂い。
木村拓哉さんでサントリーリザーブのCMをつくったとき、
私としては、こっそり真似してみた(つもり)でした。

  ウイスキーがカッコよくなくて、何がカッコいいんだ。

世界の名作レベルにはまったく及びませんが。
ウイスキーには、こういう「ことばづかい」も似合うと思って。
ある意味、それは70年代の、青春の匂いだったかもしれない。

サン・テグジュペリの小説は『南方郵便機』も『人間の土地』も
『夜間飛行』も、書き出しから、美しくてカッコよくて、泣けました。

  発信、6:10分。トゥルーズより各中継基地へ。
  フランス=南米線郵便機、5:45分。トゥルーズ離陸。

  水のように澄んだ空が、星々を沈めたり浮かびあがらせたりしていた。 
  それから夜になった。サハラ砂漠は、月光の下、砂丘から砂丘へと
  広がっていった。

           サンテ・グジュペリ『南方郵便機』