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一倉 宏

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2017/08/06 (日)
人工知能はコピーを書けるか(その2)
筑波大学の集中講座で、今年も森川幸人くんと対談形式の授業を。
「ことばと アートと サイエンス」と題し、おもに人工知能の昨今の話題から。

電通が発表した「AIコピーライター」AICO について。

http://www.dentsu.co.jp/news/release/2017/0517-009291.html

https://dentsu-ho.com/articles/5128

ここで紹介されている、日本新聞協会の「新聞広告クリエーティブコンテスト」に
審査員として立ち会っていますので、すこしコメントします。

誤解を生むのじゃないかと思ったのは、AICOが「コピーを書いた」新聞広告が
「ノミネート16作品に入選」した、というところ。
これだと「AIが書いたコピーで、コンテストに入選した」ように読めますが。

http://www.pressnet.or.jp/adarc/adc/2016.html

それは、ちょっと違います。
応募作品は、AIが書いた膨大な数の「コピー」が並べられたもので
審査会では、「ことば」というテーマに合う、時代性もあって面白いから、という
理由で推挙され、最終選考に残った。そんな経緯があります。
「AIが書いたコピー」で選んだ、選ばれたわけではありませんから。
まあ、うまくAICO自身の「広告」に使ってるな、という印象ではあります。

それよりも、面白いと思ったのは。
「AIが、2万ものコピー案を出した」というところ。
それは、かなりハチャメチャ、ナンセンス、意味不明なものばかり・・・
そうでしょう。まだ、そういう段階なんでしょうね。
でも、これが自然言語として完璧で、常識的な文を書けるようになったら。
逆に、コピーライターとしては「つまらない」「脅威でない」と思います。

CDという立場からしても、月並み、常識的なコピー案ばかりより
ちょっと外れた、普通思いつかない、そんな表現を見つけてくれた方が
ずっと役に立つ、ジャンプするヒントになる。
AIとクリエーティブの「いい関係」は、きっとそのあたりにあるのでは・・・

授業では、森川くんともそんな話をしました。

とはいえ、2万ものコピー案に目を通すのは、それだけで大変です。
そんな部下は(人間だったら)・・・怒りますね。いい加減にしろ、と。