もしも。
村上春樹さんが「源氏物語」を訳すとしたら。
どの王の時代のことだったろうか。王を取り巻く女性たちのなかでも、
それほど高い身分ではないのに、寵愛を一身に集めた方があった。想像
してほしい。最初から自分こそはと期待した姫たちはどうにも面白くな
いし、それ以上に、同じくらいか、それより身分の低い者たちはいっそ
う嫉妬する。そういうものだ。毎日の勤めに出ても、不愉快そうな視線
に取りかこまれ、恨みを向けられた痛みが積もり積もったせいだろうか、
だんだん病弱になってゆき、理由もいわず実家にひそむことが多くなっ
ていった。王はますます憐れに思い、周囲の目も気にせず、ご自分の気
持ちを抑えることができない。それは、後の時代まで語り草になりそう
な愛し方だった。あの、中国の詩人の、ブルースのように。
つづきが読みたいじゃないか・・・。