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一倉 宏

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2011/01/18 (火)
想中国 〜 Think about China

「 NEWS 23 」の特集を観て。
かつての、ANAさんの中国キャンペーンの仕事を思い返します。
「 高速中国ANA 」( 2003 〜 )
「 LIVE/中国/ANA 」( 2005 〜 )
時々に、逆風が吹く中での仕事でした。

かの国からの留学生と知り合いだったことが
予見を排して、コピーを書くちからとなりました。

2005年の「 広告サミット 」〜「 LIVE/日本/2005 」に寄せたことば。
上映は短縮版でしたが、その初稿として書いた長いバージョン。

 #1
 中国人留学生のFは、
 いまから8年前に
 日本へやってきた。

 #2
 Fは、
 中国でも指折りの
 進学校をでた秀才で、

 #3
 日本での受け入れ先は、
 いっちゃ悪いが、
 地方の無名大学だった。

 #4
 学校が用意したアパートは、
 2人相部屋で、
 エアコンがなかった。

 #5
 Fは、
 失望し、文句をいった。

 #6
 日本の学生寮に
 エアコンがないとは、
 Fは想像もしなかった。

 #7
 この話に、
 深遠な教訓はない。

 #8
 ただ、

 #9
 当時、
 すでに中国は、世界一の
 エアコン生産国だったこと。

 #10
 そして、

 #11
 日本人にせよ、
 中国人にせよ、

 #12
 自分が他者より
 「エライ」と思い込むことが、
 すごくカッコ悪い、
 ということだ。

 #13
 (5秒間 無地)

 #14
 Fはその後、
 東京で大学院に進み、
 この春、
 日本企業に就職した。

 #15
 少女の頃から憧れた、
 ある化粧品メーカーに。

 #16
 中国人留学生Fは、
 夢を果たした。

 #17
 それは、
 個人の努力と
 幸運の結果だ。
 
 #18
 (5秒間 無地)

 #19
 念のために
 付け加えておこう。
 
 #20
 Fのように、
 日本に憧れを抱いて
 アジアからやってくる
 留学生は少なくない。

 #21
 彼らのその後は、
 どうだったか。

 #22 
 もちろん、
 個人の努力も、
 幸運も不運もある。

 #23
 しかし、
 それだけではない。

 #24
 先頃の反日デモを
 ネットで呼びかけた
 リーダー格のひとりも、

 #25
 かつて、
 日本に留学していた。

 #26
 彼も、失望し、

 #27
 屈辱を受け、

 #28
 そして、孤独だった。

 #29
 このことの教訓は、
 軽くないと思う。

 #30
 (5秒間 無地)

 #31
 歴史に
 教訓があるように、

 #32
 小さなエピソードにも、
 きっと教訓があるだろう。
 
 #33
 あなたは、

 #34
 かつて
 東京の片隅で、

 #35
 ひどく孤独な
 アジア人留学生を、
 見たことがないだろうか?

 #36
 いまから
 100年前のロンドンの、
 私たちの夏目漱石が、
 そうだったように。

 #37
 (しばらく 無地)

 #38
 LIVE/日本/2005

 #39
 (しばらく 無地)

 #40
 music  ACROSS ー楼蘭の少女ー by amin

励まされたのは、Fのこんなことばでした。
「 中国の若者は(教育の影響があるから、表向き)日本に反発する。
  だけど、ほんとうは、日本のこと、好きだよ。」