・・・そういえば、こんなコピーを書いた夏もありました。
恐竜たちの夏
Summer time for dinosaurs
博物館にデパートに、あるいは映画館
に、「恐竜」はこの季節になるとやって
来る。夏休みの家族づれに会うという興
行的な理由もあるだろう。けれど彼らの
出現がこの季節を選ぶのは、それ以上に
気候の好みがあるに違いない。
今の地球の陸地は南北に広がり、熱帯
から寒帯まで温度差が厳しい。恐竜たち
の栄えた時代はそうではなかった。散り
散りに分離する前の大陸は、安定して暖
かい気候に包まれていた。極地の氷山も
氷河も消えていた時代だった。
二億年後の寝苦しい熱帯夜に。小さな
氷山をグラスにひとつ浮かべて、ピュア
モルト山崎を味わう。一億四千万年も生
きた彼らは、決して適応に失敗した生物
ではなかった。我ら人類はどうなんだ?
氷山が、時間とともに溶けてゆく。
(・・・前回のNTTデータのコピーとは矛盾するようなオチ?)
これは、サントリーを卒業してから書かせてもらったコピーだけど
そもそも、こんな文章が広告として有効なの?というまっとうな問いには
有効だと思う、ウイスキーの場合には、と答えるでしょう。
先日、高崎卓馬くんとのトークイベントで
「電通のコピーライターの書くコピーと違うのはなぜ?」と訊かれて
「いやいやそれは買いかぶり過ぎだよ」といいつつ、違うとすれば
「酒、とくにウイスキーのコピーで育ったところかな」。
たとえば、もっと商品寄りに書いたものでもこんな感じ。
こういうことで、ちゃんとOKの出る会社だったから。
ウイスキーの七曜日
Seven days about whisky
月曜日。ウイスキーは歳月がつくる。
言うまでもない。時が育てた豊かな熟成
香こそウイスキーの命。月見て飲む。
火曜日。ウイスキーは火がつくる。蒸
溜の火加減も職人の技。暖炉で飲む。
水曜日。ウイスキーは水がつくる。ふ
るさと山崎は、千利休が茶室をひらいた
ほどの名水の地。水割りで愉しむ。
木曜日。ウイスキーは木がつくる。樹
齢百年を越えるホワイトオークの樽がつ
くる。樽は揺り籠。木の香に安らぐ。
金曜日。ウイスキーは金がつくる。正
確には銅製のポットスチルでつくる。中
世の錬金術師の発明。金色の液体。
土曜日。ウイスキーは土がつくる。原
料は大麦、けれどそれだけではない。
さて、日曜日。休日にはとっておきの
ウイスキー、ピュアモルト山崎を。
また、ウイスキーのコピー、書きたいなあ。
「コピーの師匠っています?」という質問には・・・
遙か天上に開高健さんがいて、それから、サン・アド時代に仲畑さんが書いてた
角瓶の新聞広告のコピー(たとえばカレル・チャペックの文体を模したもの)
などにはとてもヒントをもらい、勉強をさせてもらってました。
もうひとり、文学派バーテンダーの第一人者、福西英三さんにも!
サントリーのHPから「ウイスキーミュージアム」を訪ねてみてください。
そこに、福西先生の(図書室のような)カウンターがあります。