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一倉 宏

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2011/09/28 (水)
芥川龍之介のラブレター

震災後、「偽善」について考えることが多く。

ふと、こんなことを思い出しました。(直接は関係ないけど)
芥川が、結婚直前の許嫁(自分の資質について尻込み気味だった)
に宛てた、有名な手紙群の文面です。

 「つくろはず、かざらず、天然自然のままで正直に生きてゆく
  人間が、人間としてはいちばん上等な人間です。どんなとき
  でも、つけやきばはいけません」

 「文ちゃんは何にも出来なくていいのですよ。今のまんまで
  いいのですよ。そんなに何でも出来るえらいお嬢さんに
  なってしまってはいけません」

 「大抵の事は、文ちゃんのすなほさと正直さで立派に治ります。
  それは僕が保証します。世の中が万事利巧だけでうまく行く
  と思ふと大まちがひですよ。それより人間です」

いまの多くの、がんばり屋で優秀で、自立した女性たちにとっては
「バカにされた」と思えるほどの、甘ったるいことばでしょう。
しかしそれについては、大正の時代だったということで。
(まだ100年も経っていない昔だけど)

ここに、芥川の(生い立ちによる)「構え」、より厳しくいえば
「優等生」「仮面」「偽善」の性癖を批評家は指摘しています。

私は、芥川に同情します。
(コピーライターは「きれいごと」を書くしごとだから?
 あるいは、天才演出家、杉山登志の運命も思い出します)

ここに欠落しているのは「男と女」、そして「男の真情」です。
それはやっぱり、ぬぐえなかった「構え」かもしれません。
人並みな「甘え」を欲しながら、それを自分に許さなかった人間の。
それが芥川の(ひいては自死に至る)「悲劇」だったと思います。

>>読んでいただいたかたから、もっともなご指摘を受けました。
  朝刊が届く時間に書いた失敗作ですが、削除せず残します。
  後日、より詳しく書き直します。反省をこめて。