私たちの世代にとって、北杜夫さんの「どくとるマンボウ」シリーズは
青春の通過点にあったベストセラーズでした。
その愛娘、斎藤由香(自称「窓際OL」、こと、エッセイスト)が
かつて会社の後輩で、同じフロアに勤務していたことは
わが人生の、素敵なエピソードのひとつ、に思えます。
私が、ちょうど「厄年」の頃も
それから、さらに長じて「老年性のウツ」をアタマにかぶった時も
斎藤由香の「パパの話」を聞くことで
どれだけ相対化し、自分の荷物を軽く思えたことか、わかりません。
「父よ、あなたは変だった」
そういう<素敵な>話を聞かせてもらうたびに
私たちは、笑いころげながら、安堵したのでした。
すべての人生は、YESである。
・・・と。
北杜夫さん。ありがとう。
『どくとるマンボウ』も、『楡家の人々』も
もちろん、傑作に違いないけれど。
私のいちばん好きな、あなたの作品は『船乗りクプクプの冒険』です。
嫌々ながら宿題をしていた勉強嫌いの主人公、タロー君がふと手に取った
キタ・モリオ作の小説「船乗りクプクプ」という本は、作者がとんでもな
い怠け者だったため、本文・まえがき・あとがきを含めて4ページしか書
かれていないインチキ本だった。ところが、タローはいきなりこの本の中
に吸い込まれてしまい、気が付くとアラブの原住民の子供のような、主人
公のクプクプになっていた。
( wikipedia より、梗概の冒頭部分 )
童話ながら、『ネバー・エンディング・ストーリー』にも先駆ける
<メタ・フィクション>の傑作でした。