1年という時間の長さが
あるいは たった1月あまりの夏休みでさえ
まるで 永遠の何分の1かに思えた 誰だってこどもの頃は
なるほど 年をとるほど 時間がはやく流れるのはまちがいない
もう 1世紀の半分以上も生きてしまった 僕にも
かつて 1世紀はまさに 永遠の何分の1かだった あの頃
大学の4年間はまだそれなりに長くて 僕は
13世紀ほど前の 日本の文学を勉強していた
それは一般的に 上代 あるいは 古代 とも呼ばれる
ところで うちのおばあちゃんは103歳まで生きた
100年を生きる日本人は もうめずらしくない
40000人を越えたという そのほとんどはおばあちゃん
だから こんな数えかたを考えてみた
100年という時間の単位を
1世紀 改め 1おばあちゃん と呼ぶ
江戸時代は たかだか 1おばあちゃんと半おばあちゃん前
つまりそういうことさ うちのおばあちゃんは明治の生まれで
そのおばあちゃんは江戸時代の生まれだった
だとすれば 僕が勉強した「古代」って時代だって
わずかに 13おばあちゃん前 に過ぎない
そして 「貞観」という年代
想定の外にあったという だからしかたがないという
三陸をおそったおおきな地震と津波の記録も その消えた記憶も
たった 12おばあちゃん前の 歴史に過ぎなかったのに