種村季弘『ナンセンス詩人の肖像(増補版)』筑摩書房1977(旧版は1969)
こんな名著が絶版なんて・・・もったいない。
種村先生ですから、なかなか歯ごたえのある文体ですが。
収録された作品例がまたすばらしい、ことばの宝箱。
触発されての「数詩(すうじ)」を、ひとつ。
零になるまで
0時を過ぎて夜空を見上げ
もしも僕が1羽の鳥で
2枚の羽根をもってたら
3丁目3番地の3
4階建てのあのマンション
5階に住む君のもとへと飛んでゆく
6角形のギターを抱えて
7弦でつま弾くボサノバ
それは8度のハーモニー
9小節めで宙返り
十分じゃないか
九回裏の大逆転
八方塞がりの恋だけど
七月七日の七夕に
六度目の正直ってこともある
五色の虹を渡って飛んでゆく
四半世紀も好きだった
三時の昼飯も抜いていい
二人といない 君だから
一人を愛そう その君を
零になるまで