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一倉 宏

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2011/02/14 (月)
あのひとの手紙

サントリー美術館が、まだ赤坂見附にあった頃。
「近代芸術家の書」と題した展覧がありました。

印象深かったものを3つ。

与謝野鉄幹(寛)と晶子の「寄書」。

 おほ空のちりとはいかが思ふべき
 熱き涙の流るるものを 寛
  しらじらと木蓮咲きぬ大ぞらの
  ひるの光を目におかぬ如 晶子

晶子の歌が寄り添うように、というか
まるで肩にもたれかかるようなかたちで書かれています。

石川啄木の「書簡」。

 米長氏の方失敗に終り、其他
 も矢張ダメ、一昨日四方へ手紙とば
 したけれども、其返事未だ来らず、
 (略)
 米は今夜つきたり、明朝は粥。
 (略)
 この文御落手次第
 一円か二円頼む、どうぞ、
 (略)
         啄木

啄木のこの手の手紙は多数存在するってことかな?
でも達筆、見事、この墨跡はいまや何十万円の価値があるか。

もうひとつ、宮本百合子の「書簡」。

  初春景物

 笹の根に
  霜の柱を
   きらめかせ
 うらら冬日は
  空にあまねし

  こういふ奇妙なものを
  お目にかけます
  うたよりも封筒を
  さしあげたいからよ
  かいた手紙は△すぎて
         入らず

  二日   百合子

 顕治様

△は私には読めなかったところですが
おそらく漢字で「長」かなあ。
しかし、なんてかわいい手紙だろう。
たしかその「封筒」も展示されていたはず。
でも、正月二日に夫へ宛てた手紙、ということは・・・
このとき宮本顕治(後の共産党委員長)は獄中だったのかも。