すでに、ナカヤマサチコさんのブログで発表がありましたが。
東京FM の朗読番組「 Tokyo Copywriters’ Street 」が今月で終わります。
はじまりは、たしか 2006年秋のことでしたから、かれこれ5年。
たくさんの仲間が参加してくれて、濃い内容だったと自負します。
役者のみなさん、制作スタッフも、みんな意気に感じて。
とはいえ、この「プログラム」が終わるわけではなく
ネットに拠点を移して、まだまだ続けます!
ライブも、また次回公演を、おたのしみに!
FM放送では最後の、今月のお題は「ありがとう」です。
使わなくなった「ことば」たちは
ストーリー 一倉宏
出演 水下きよし
まいど お騒がせしております
「ことば」の回収車でございます
ご家庭で不用になった「ことば」
使わなくなった「ことば」は ございませんか
無料にて 無料にて お引き取りいたします
そうですね
この仕事をはじめて5年になりますね
いちばん多いのは やっぱ
「ナウい」とか「イケイケ」とか「ボイン」とか
「シティ感覚」とか「スグレモノ」とか
そういうのですね それこそ掃いて捨てるほどで
あの レインボーブリッジから 向こう
あっちの埋め立て地には たくさん埋まってますよ
そういう「ことば」が
あと「ハマトラ」とか「ボディコン」とか
そういう ファッション系ね
ファッション系のなかには ごくまれーに
いわゆるレアもの? ありますけどね たまーに
でも めったに出ないです そういうのは
あと多いのは ギャグ系ね
「こにゃにゃちわー」とか 「そんなバナナ」とか
もう 古くて笑っちゃうやつ だけど使えない
修理しても 電池入れ替えても だめ
だけど たとえば 「ゆるしてちゃぶだい」
これなんかは 「ゆるして」を取っちゃうんです
そうすると 「ちゃぶ台」は人気ありますからね
いまの 若いひとには
まいど お騒がせしております
「ことば」の回収車でございます
そうだなあ
古い住宅街 昔からのお屋敷町みたいなところをまわると
ひょっこり「無礼者」「名をなのれ」なんてのが
出てきて びっくりしますけど
そんなに古くなくても 「逢い引き」とか「接吻」
「インテリゲンチャ」とか 「愚妻」とか「豚児」とか
このあたりも どうかなあ
アンティークというほどでもないし
ご家庭で不用になった「ことば」
使わなくなった「ことば」は ございませんか
無料にて 無料にて お引き取りいたします
たとえば このあいだ見つけたのは
「たゆたう」 なかなかいいでしょ これ
ていねいに磨けば まだ使えますよ
「たゆたう」 僕は好きだなあ
あと 「ひたぶる」とか 「もの憂い」とか
ここだけの話ですけどね
この仕事してると 気がつくことがあるんです
立派なお宅の奥さんに声かけられて
お邪魔して いろいろ拝見して 引き取って
そうするとね
その向こうに うっすら埃をかぶって
あるんです 「ありがとう」とか 「ごめんなさい」
あ もう何年も使ってないなって わかるから 職業柄…
そっと埃だけ払って 置いてくるんですよ
そういうときは
奥さんはたいてい いいますね 最後に
ちいさな声で …ありがとう って