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一倉 宏

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2010/03/23 (火)
KASAI kaoru 1968 〜 葛西薫さんとの28年

kasai

葛西さんの作品集
500頁を越える大冊が
ようやく完成。
きょう届きました。
どの頁も美しく
ぜんぶ葛西さんの匂いがする。
これで4700円(税別)は
驚異的なほど良心的。

サントリーのギフト。ウイスキー。
モルツの新発売キャンペーン。
NTTデータの科学者シリーズ。
ユナイテッドアローズのためのいろいろ。
是枝映画「誰も知らない」のポスター。
それから、私の本の装幀、本文デザインも載って。
たくさんの思い出が詰まってる。

いちばん最初にした仕事は、おお、1982年。
ということは、私は27才、葛西さんは33才か。
サントリーのギフトキャンペーン「あなたが、くれたもの」。
まだ駆け出しのふたりの、ほんと、大抜擢でした。

モルツは、新聞広告をたくさんつくった。
あの、モンブランの太字の、葛西さんの手書き文字で。

やっぱり、いいなあ、新聞広告。
そう、サントリーウイスキーローヤルのコピーも書いた。

 「手巻き式腕時計のように。」

  何日もかかった旅が数時間になった。何ヶ月もかかった計算が
 数分間になった。しかし、ウイスキーが熟成されるまでの時間は、
 すこしも短縮されていない。
  こんな時代にあって、ウイスキーづくりはなんと例外的な仕事
 だろう。原料から製品までの間に、長い長い年月がある。つくら
 れるものと、つくる者とは、数年、十数年という年月をともに暮
 らす。私たちは樽のひとつひとつに感情を抱く。
  どうして愛情を持たずにいられるだろう。チクチクという刻み
 とともに、美しく逞しく優しく育ってゆくウイスキーに、
 どうして生命を感ぜずにいられるだろう。
  サントリーウイスキーローヤル。
  短縮されない時間の豊かさは、この琥珀の色に、芳醇な香りに
 凝縮されている。封印を開けてから液体が消えるまでの、較べれ   
 ば、遙かに遙かに短いひとときのために。

 
感動したのは、このときの葛西さんの
字組、字送りの自由闊達さ、それでいて端正な美しさ。
ここには再現できません。ぜひ、本書の写真版でごらんください!