1999年のこと、
サントリー山崎の新聞広告に、こんなエッセイ風コピーを書きました。
サイレンスを探して
Seeking for Silence
インターネットで検索しても、見つか
らない。ぜひ手に入れたいものがあるの
だが。それは「静寂」である。科学文明
は、夜の部屋に明るさをくれた。夏に涼
しさをくれた。ならば同じく、静けさを
作り出すことはできないだろうか。
「静音機」の発明。音の波形と逆の位
相の振動により不快な音のエネルギーを
打ち消します。最大有効減衰音圧マイナ
ス50デシベル。スイッチを入れれば、
高原の静けさが訪れます。寝室に、書斎
に、そしてウイスキーのお伴に!
街のノイズも家族の話声も消えて。染
み透るような静寂。ピュアモルト山崎を
楽しむ夜にまたとない。完璧な環境だ。
耳も、鼻も、舌も、研ぎ澄まされて待機
する。深いしじまに、カランと氷の鳴る
音が・・・ 待てよ。その音はどうなる?
BOSE社の「ノイズキャンセリング」を知ったとき。
おお、ついにできたか! 私の夢想したあの大発明が!
と、思ったものですが。
「インターネットで検索」したら、すんなり出てきました。
「静音スピーカー」の原理はずいぶん前から知られていて、
「90年代には(ヘッドホン型が)すでに製品化」されていたそうです。