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一倉 宏

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2010/02/11 (木)
日々のソネット #4 〜 あるボケの詩 〜

  
  なんだっけ あれは

 なんだっけ むかし流行った あの映画
 音楽も流行って ラジオでもよく流れていた
 場所はどこだっけ 二子玉かどこかで 観たあと君が
 たしかに泣けるけど ずるい そういって泣いた

 なんだっけ バート・バカラックじゃなくて
 題名は 小さな恋の でも 真夜中の でもなく
 だれだっけ 主人公はダスティン・ホフマンじゃなくて
 あれからいちども テレビでもビデオでも 観たことがなく

 なんだっけ あのセリフ 当時すごく有名な
 Love is blind でも 同情するなら金をくれ でもなく
 なんだっけ もう 酔いすぎてしまったみたいな
 どうでもいいみたいな なにもかもわからなく 泣く

 ああ 僕は歳をとってしまったのだろう なんて!
 そのあとの 君のセリフさえ 思い出せないなんて
 

いやあ、50代から上のオールドには
・・・もしかしたら40代のあなたにも?
「共感を呼ぶストーリー」になったかもしれません。

今日のソネット ☆☆☆☆
作者自身はけっこう好き、これ。
でも、若いひとが読むと、わけわかんないだろうなあ。
イライラするだろうなあ。いつかはわかるよ、君も。



  1. pacificot より:

    同じことを一緒になって思い出せない両親を見て、ほほえましく思ったことがあります。その感じに似た、やさしい風景のソネットでした。

  2. ichikura より:

    なるほど。
    銀婚式あたりから、そういう夫婦になっていきますね。