残念ながら深夜に及ぶ撮影に立ち会い、Net 中継を見逃しました。
ニュースでは、オーストラリアの夜空に花火のように燃え散る衛星、
そして一閃の流星となって落下するカプセルを放映していました。
ちょうど半年前の09年12月、
東京FMの深夜の朗読番組「 Tokyo Copywriters' Street 」にて
オンエアした作品です。
流星になれたら
いつかこの世に さよならをする日が来たら
すでに用を終えた肉体は ただ 灰になるだけ
それを 残さなくていい
できれば 硬い金属の 小さなカプセルに詰めて
宙(そら)高く 打ち上げてくれ
高く 高く 高く
そうして 地上100kmを越えて 宇宙空間へ
最後に 青い地球を眺めた後は…
生前は 大変お世話になりました
本日夜 故人の希望どおり 遺灰を詰めたカプセルが
大気圏に 再突入する予定です
予定時刻は 午後10時10分前後
方角は オリオン座 あるいは牡牛座のあたり
気象条件がよければ 一筋の流れ星となって
みなさまと 最後のお別れができるかと存じます
これをもって 故人を偲ぶセレモニーとさせていただきます
その他 一切のお心遣いは 不要でございます
どうぞ みなさま 冬の夜のひととき
オリオンを目印に 流れ星をお探しくださいませ
…なんて 考える
最後は 流星になれたらいいのに
ひとは亡くなって 星になるともいうけれど
ふるさとの地球 太陽系と 遠く遠く離れたところで
星になっても なんだかさびしいから
母なる地球の 引力と大気で 燃え尽きる
流星になれたら と思う
地球が誕生して 生命がうまれ 人間たちが闊歩するまで
あるいはもっと 宇宙が誕生してから いまのいままで
その 百億 何十億年という時間に比べたら
僕らの一生なんて ほんとうに一瞬の
流星のようなものに違いない
僕らはもう 宇宙の歴史も 果てしなさも知っている
どう威張っても 僕らの存在は 短い
そして 小さい
だけど
だからいっそう 切なくも 愛おしいのだけれど
その流星の 一瞬のきらめきが
そして その一瞬のきらめきのうちにも
精一杯の 願いごとを詰め込んで
僕たちは 生きている
おやすみなさい
またあしたも 元気に 会いましょう
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こちらから、板東工による朗読をお聴きになれます。