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一倉 宏

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2010/12/26 (日)
ある贈りものの話

かつて「一倉クラス」(坂本や岩田純平などが在籍)の
掲示板に書き込んだメッセージです。

 すこし昔話をしよう。

 私がまだ幼い頃にも
 ささやかながらクリスマスプレゼントはあった。
 こどものくせに この世には
 「科学的」と「非科学的」があるらしいとわかっていたので
 サンタクロースにお願いをした記憶はない。

 それでも
 もしも私が一年間いい子でいたのなら
 もしかして「あの」プレゼントが手に入るのではないかと
 淡い期待を抱いていたように思う。

 私は毎年すこし失望をし すこし自己嫌悪に陥り
 そしてだんだんあきらめていった。

 ひとは
 「もらったプレゼント」の多くを忘れてしまうだろう。
 私はまだその
 「もらえなかったプレゼント」のことを憶えている。
 私は執念深いたちではない。
 ただあのときのクリスマスの朝の気持ちは
 ひっそりと憶えている。

 いまはなんだかそれも
 私の人生へのプレゼントって気がするのだ。

 昔 朝日出版社「週刊本」のシリーズで
 「ユーク <ある日曜日午後7時のちいさな国>」という
 おとぎ話を書いた。(絶版在庫なし)
 それはいくつかのレトリックで組み立てた
 架空の国のお話なのだが
 その国ではひとびとは別れの挨拶でこう言うのだ。

 「コンプレックスを大事にしなよ」

 誤解のないようにもうひとつ付け加えておく。
 このおとぎ話の主人公である<僕>のコンプレックスは
 ○ン○ンが異常に大きいことなのだが 
 最後に <ことばを失った>ガールフレンドが
 ことばを取り戻して言う。

 「前から教えてあげたかったのだけど
  あなたのコンプレックスって
  あなたが思っているほど大きくはないわよ」

 どうぞこの二重のレトリックが
 伝わりますように。

 ではみんな
 よいクリスマスを。