昨晩、TBSラジオ「 Kakiiin 」の中のコーナー
「 Music Words 」にて話したことを、忘れないうちに。
今回のテーマは「作詞家としての森高千里さん」。
80年代後半から90年代にかけて
アイドル的存在(いまでいえばAKB48のような)だった彼女。
しかし、ほとんどすべての作品はみずから作詞していたという
スーパーアイドル、才能の持ち主だったんですね。
というわけで、今回は作詞家としての森高千里を再評価してみたいと。
彼女の詞(ことば)の世界は、非常に多彩です。
ノリのいいロックンロールから、しっとりしたバラードまで。
それだけじゃなくて、ストーリーが、切り口がとても多彩なんです。
まさに、森高千里七変化、いや何十変化を、自分で描いて、演じていた。
大変に優れた作詞家、そしてクリエーターであると考えます。
(以下、具体的な作品にふれながら)
「私がオバさんになっても」
森高さんの詞は、どれも等身大。気取ってない。だけど、鋭い。
「私がオバさんになっても」というフレーズはキャッチーで見事。
「夏休みには二人してサイパンへ行ったわ」
「来年もまたサイパンへ泳ぎに行きたい」
「サイパン」がいい。「来年はタヒチかハワイ」じゃないところも。
生活感がある。嘘がない。だけど、キュート。
「私がオバさんになっても泳ぎにつれてくの?」
「ディスコにつれてくの?」「ドライブしてくれる?」
「とても心配だわ あなたが若い子が好きだから」
男性に対するすべての女性の気持ちを代弁している。
ユーモアもある。愛もある。
「ロックンロール県庁所在地」
作詞の幅の広さを示す例として。
北から南まで県庁所在地をつないでロックンロールに。
この遊びごころには驚いた。
で、今回注目したいのは「渡良瀬橋」。
いまや、ご当地ソングとして、地元(足利)に歌碑が建っているほど。
とはいえ、地方都市のどこでもありえそうな「原風景」。
ストーリー、設定が、多くの人の感情移入ができるように
「ことばの風景」がじつによくできている。
八雲神社、公衆電話、というあたり。
和風でありながら演歌じゃないポップス。
ラジオでは割愛したエピソードですが・・・
この歌詞は、古典文学、説話をもとにした、という説があるそうです。
「伊勢物語」あるいは「源氏物語」のような「貴種流離譚」
・・・という見立てでしょうか?
王家の血筋を引く者、プリンスが、地方に流され、地元の娘と恋をする。
結末は、たいてい「涙の別れ」。
なるほど・・・こんな「深読み」も面白い。
この「あなた」が「電車にゆられこの街(足利)まで」行くなら
きっと、東武伊勢崎線に乗ったのでしょう。
その駅は「伊勢物語」にちなんだといわれる「業平橋」だった??