3月19日の毎日新聞(朝刊)に
第3部・広告主参加作品の部の選評を書きました。
最高賞・グーグル
この年の記憶とともに 選評・一倉宏
震災を契機に痛感したのは、広告活動が平穏な日常の風景だった
ということだ。緊張の中で空白期間は長くつづいた。企業として何
かメッセージするにも、お見舞いという定型を超えた想像力と表現
力の例は少なかった。このことは記憶されておくべきだ。そして、
この年の新聞広告を評価するなら、やはりあの日付以降のもんもん
とした体験を抜きには考えられない。個人的にはそう思っていた。
もちろん作品の審査においてそれは与件ではない。公共と広告、
パブリックとパブリシティーは重なり合う部分もあるが、それがす
べてではないから。あくまで広告の賞であるなら、審査する目はい
ろいろな角度から考える。本賞の伝統において、デザイン賞という
意味も重い。それをどう考えるかも、問われた審査となった。
結果として、最高賞に選出されたのはグーグルの「未来へのキオ
ク」プロジェクトだった。評価されたのは、やはり表現として以上
のアクションの意味だろう。ネットの特性を生かした活動が、新聞
の公共性と融合したところにも時代性がある。
(中略)部門賞も秀作ぞろいだが、小スペースながらヤマトホール
ディングスのメッセージ広告に、あの日あのとき一読者として感銘
を受けたことも忘れないだろう。