夏がなかなか去っていかない。
暦では「立秋」はひと月も前に過ぎたはずなのに。
帰らない押し売りのように、夏はずっといすわっている。
ギラギラといけすかない日差しや、エラそうな入道雲に
こちらがキレそうになる前に、蝉は先にこときれて、
なぜかうちのベランダは死んだ蝉の墓場になってる。
それいったい誰が片付けると思ってるんだ。
朝カーテンを開けると、
死んだ蝉が、きょうも増えていた。
それはカリッと香ばしく死んでいた。
まただ。
さいしょの一匹を見つけたとき
階下にポイしてしまえと思ってつかんだら、
じつはまだ生きていて、
いきなり「ミミミ」と暴れてこちらが死にかけた。
だれかが、セミファイナルといった。
死んだ蝉は、夏の抜け殻のようだった。
夏がすっかり、もぬけの殻になるまで、
うちのベランダは、きっと夏の抜け殻を集め続けるだろう。
遠くで、まだ蝉の声が聞こえる。