ちかごろタテは、肩身がとても狭い。
さいしょから、そう広くはない肩身であったけれど、
もうみんな、世は、右から左にヨコである。
いや、左から右に、ヨコなのだ。
右から左は、タテから生まれたことばではなかったのか。
もはや、ヨコはタテの右に出る者になってしまったのか。
こうしていま綴られる文章にさえ、嫉妬を覚える。
タテは、なにか口惜しい。
さみしくなると、
タテは「こくごの教科書」に思いを馳せる。
小説や新聞、右ページからはじまるものや
特にタテにハコ組されることばたちに。
そして、タテはタテらしく、
ヨコにできないことをしようと、
ぴしっと背筋を伸ばして、いまいちど列を整え、
行と文字の点呼を取った。
タテは未来を想像する。
その未来は、タテにとって
きっと喜ばしいものではないだろう。
けれど、タテはそのことに楯突いたりせず、
そっと見守ることを、もう心に決めている。