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坂本 和加

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2010/06/03 (木)
切手のない手紙

切手を出さずに、ポストに投函してしまう。
ということを、じつはよくやる。悪意はない。
近ごろは運輸会社のメール便というものも便利で
つまり、封筒に切手をはらずに持ち歩くから。
ごめんなさい。

ところで。
切手を出さずにポスト投函すると、こんなことがおこる。

1.「切手を貼って、再度投函してください」と
書いた紙が貼られて、ある日、うちのポストに
配達員のいらだちとともに投函される

2.お届け先のひとが、わたしの代わりに請求される。けれど、
何かの時に思い出したように「切手代、払いましたよ」と言われる。
なにか「借り」をつくったような気持ちになる。

たいていの場合は、1。
こちらの住所が書いてなければ、2。
けれど、いちどだけ、あったんだ。
1でも2でもなかったことが。
たしか、それは実家の母に宛てた手紙だった。

「ねえ、あなた切手貼らないで出したの?」
 それとも貼ったのに、はがれてしまったの?」

そんな電話が母からかかってくるまで、すっかり忘れていた。
いわれてみればたしかに、切手を貼った記憶がなかった。
けれど娘の手紙は、きちんと届いた。
「次回は切手をお貼りください」という
ちいさな手描きのメモが貼られて。

それからしばらく、
わたしは相手先にかかわらず
なんとなく少し多めの切手を貼って、
手紙を投函するようになった。

そしていまだに、
いちばん適切で正しい行いをしたのはだれなんだろう、
ということについて考える。