日本で最初に作られた辞書の名前が
「言(ことば)の海」と書いて、
「言海」だということを知って
ネーミングもさながら、ちょっと感動した。
改訂を重ね、いまはまさに「大言海」となった
その辞書には、編纂者である大槻文彦の書いた
長い「まえがき」が書いてある。その「まえがき」を
じっくり読みたくて、活版の文字のならんだ
レトロなお菓子の包み紙のような
うすくて透けたページを、いそいそとコピーして帰った。
読んでみれば、
「まえがき」には、まえがきらしからぬことが書いてあった。
この辞書には「老人の歯のぬけたらむようなる所」があること、
編纂の途中、「ひとり笑へる事ありき」だったこと、
汽車のなかにいた田舎のひとをつかまえて、方言を問いつめたりしたこと。
ことばの海の航海は、いつだって難航をきわめていて、
けれど、大槻先生がどれだけその海を愛していたのかも、よくわかる。
ことばは「郵便規制の如き」改正するし、
「酒醤油の如き新製法」も日々起こるだろうから、
その意味については、だいたいにしておきます。
最後のほうには、こんなことが書いてあった。