春の準備をしなければと、 クローゼットの奥のほうにしまっておいた ブラウスを取り出したら、 よく目立つところに「かなしみ」がついていた。
クリーニングには出したけれど、 そのときは気づかなかったのだろう。 クローゼットの中でその「しみ」は そっと輪郭を深くしていた。
たぶん、もう落とせない。 でも、もう着ることもないだろう。 けれど、なんとなく捨てるには忍びなくて、 また元の場所にもどした。
かなしみとは、そういうもの。