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坂本 和加

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2012/09/09 (日)
夏の抜け殻

夏がなかなか去っていかない。

暦では「立秋」はひと月も前に過ぎたはずなのに。
帰らない押し売りのように、夏はずっといすわっている。
ギラギラといけすかない日差しや、エラそうな入道雲に
こちらがキレそうになる前に、蝉は先にこときれて、
なぜかうちのベランダは死んだ蝉の墓場になってる。
それいったい誰が片付けると思ってるんだ。

朝カーテンを開けると、
死んだ蝉が、きょうも増えていた。
それはカリッと香ばしく死んでいた。
まただ。
さいしょの一匹を見つけたとき
階下にポイしてしまえと思ってつかんだら、
じつはまだ生きていて、
いきなり「ミミミ」と暴れてこちらが死にかけた。
だれかが、セミファイナルといった。

死んだ蝉は、夏の抜け殻のようだった。
夏がすっかり、もぬけの殻になるまで、
うちのベランダは、きっと夏の抜け殻を集め続けるだろう。

遠くで、まだ蝉の声が聞こえる。