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坂本 和加

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2011/03/31 (木)
それぞれの。

少年は、ちいさな肩を落としていた。

みんなさがしてる。
それぞれが、いま、できること。

それは「ある」ようで、なかった。
さいしょから、「なかった」ものなのかもしれなかった。

そんなことはない。少年は、そういって
つけっぱなしのテレビを見つめ、
そこへ行けないことをくやしがった。

少女は考えていた。
いま、わたしに何ができるのかということ。

朝起きて、プランターの植物に水をやること。
お気に入りのスカートをはくこと。
みんなに「おはよう」をすること。
おこづかいからの寄付は、すでにしてしまっていた。

それらは、とるに足らないことのように思えた。
昨日までできていたあたりまえ、だったから。

それから少女は考えた。
いままで誰かに何かをしてあげられるようなことなど、
いくつわたしに、あったろうか。

窓の外の、
もうすぐ咲きそうなチューリップが、風でゆれた。

けれどあなたが、いてくれて、よかった。

もう、少年でも少女でもないわたしは、
彼らと同じようにとおく離れたところで
そんなふうに思った。

それぞれのできることは、たぶんとおくで、つながれる。
そんなふうにも、思った。