少年は、ちいさな肩を落としていた。
みんなさがしてる。
それぞれが、いま、できること。
それは「ある」ようで、なかった。
さいしょから、「なかった」ものなのかもしれなかった。
そんなことはない。少年は、そういって
つけっぱなしのテレビを見つめ、
そこへ行けないことをくやしがった。
*
少女は考えていた。
いま、わたしに何ができるのかということ。
朝起きて、プランターの植物に水をやること。
お気に入りのスカートをはくこと。
みんなに「おはよう」をすること。
おこづかいからの寄付は、すでにしてしまっていた。
それらは、とるに足らないことのように思えた。
昨日までできていたあたりまえ、だったから。
それから少女は考えた。
いままで誰かに何かをしてあげられるようなことなど、
いくつわたしに、あったろうか。
窓の外の、
もうすぐ咲きそうなチューリップが、風でゆれた。
*
けれどあなたが、いてくれて、よかった。
もう、少年でも少女でもないわたしは、
彼らと同じようにとおく離れたところで
そんなふうに思った。
それぞれのできることは、たぶんとおくで、つながれる。
そんなふうにも、思った。