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坂本 和加

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2010/07/16 (金)
OL物語 第2話

第1話から読む。

朝のお茶出しに始まるOLの仕事というのは、
けっこういろんなことがある。
「坂本さん! もうすぐ9時!」と、先輩に言われて顔を上げたら
同じ課の女子社員が全員受話器を握りしめて
電話のプッシュボタンをいざ押さんと、まんじりとにらみつけている。
「えっ、いったいなにごとですか!」と、慌ててわたしも
受話器を取るけれど、どこにかけていいやらわかるわけもない。
時刻は9時になり、言われるがままに
「短縮2」をくり返し連打するのだけれど何度かけても、
電話がつながることを永遠に拒否しているかのように話し中で、
そのつながらない電話の先は、
社長のゴルフの予約先だとわかり、わたしは目が点になった。

OLの仕事には、考え出すと仕事にならなくなる仕事もある。

部長の点数稼ぎ仕事である「月に一度のゴルフ場の予約」は、
誰かがつながらないと終わらない仕事で、
「いったいなぜわたしが」とか、「だれがだれと平日に」とか、
「もしつながらなかったら」などとは、聞いてはいけない。思ってもいけない。

とりあえず、ゴルフのことはよくわからないので
「つながりませんように」と毎月祈るようにかけていたのに、
不運にも一度だけつながってしまったことがあった。
けれど、ひとが出たことにびっくりして、わたしはとっさに電話を切った。

いまだに「東のイン」も「西のアウト」も、
よく意味がわからないし、
みんなが目を三角にしてかけていたゴルフ場の名前さえ、ナゾである。

つづく。