英独立調査委 イラク戦争でのブレア政権判断を批判(NHKニュース) IRAQ INQUIRY という、その膨大なレポートが、全面的に公開されています。 http://www.iraqinquiry.org.uk
私たちの寓話 〜 2003年の正義と勇気 〜 生徒会長の米くんは、背が高くてスポーツ万能でカッコよかった。 副会長の英くんは、おぼっちゃんで品があって、尊敬されていた。 生徒会はそれなりに機能していたはずだけど、 いつの頃からか、校内がなんだか荒れた空気になって、 正義感のつよい米くんのイライラする様子が目立ってきていた。 私は米くんが好きだったし、小学校からいろいろ助けてもらったり かばってもらったりしてきたので、米くんを応援するグループにいた。 だから、あるとき米くん自身が突然殴られたのをきっかけに、 神経をピリピリさせキツイ態度になってきたのも、それなりに理解した。 いや、正直なところ、ちょっとおびえながらも、 理解者で、味方であろうとしてきた。 おびえてはいけないと自分に言い聞かせ、このひとの怒りの側に立った。 このひとの正義感と純真さを信じていた。 信じ切ろうと思っていた。 しかし、ほんとうにそうだったのだろうか。 正義ってなんだろう。勇気ってなんだろうと、いま思う。 いろいろな事件がつづいていた。 なかでも米くんをキレさせたのは、布施たちのふるまいだった。 布施は、米も英もその仲間たちも、 優等生が自分たちの都合のいいように校内を仕切っている、と批判した。 ザケンジャネーヨ。 そう言って、布施は唾を吐いた。窓ガラスを割った。 米くんを慕うグループでいちばん小さい久恵を殴る事件を起こし、 駆け寄った多くの男子たちから吊し上げられ、 いちどは、おとなしくすると約束させられたかたちになったが、 それもウヤムヤにして、敵対をやめなかった。 そんな日々に。 みんなを恐れさせたのは、どこからか聞こえてきた、 布施がそうとうヤバイものを隠し持っている、という噂だった。 米くんたちはその真偽を確かめようとした。 しかし、ゲンブツは出てこなかった。布施はとぼけた。 米くんたちは、なんども警告した。期限を切った。 そして、あの日がやってきた。2003年3月19日。 白昼堂々と、予告までして、米と英たちは、布施をボコボコにした。 私たちは、教室の窓から、それを見ていた。 争いの現場の、遙か遠く、校舎の2階の「四角い窓」から。 確かにあのとき、私は、殴りかかる者の立場で、それを見ていた。 *ラジオの朗読番組に書き下ろしたものの、未発表に。 その後、『ことばになりたい』(2008) に収録。