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一倉 宏

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2013/09/29 (日)
群馬の空

今回のロケ地は前橋。
広告制作の仕事について30数年。
はじめての、ふるさと群馬でのロケでした。

一日目は台風20号の影響で雨まじりの曇天。
けれど、空抜けのカットを撮る二日目は、天頂に青い空が。

台風の通り過ぎる空はドラマチックに動きます。
一日、空を眺めながら過ごして、思ったこと。

ああ、この空の下で、ぼくは育ったのだと。

  前橋で降り、そのあと桑畑のあいだの道を徒歩で西方の
 相馬ヶ原(現・箕輪町)にむかったときは、はじめて見る
 関東平野というものの広さにおどろいてしまった。
 「こんな広いところが、日本にもあったんですねえ」

 (中略)

  榛名、赤城という、山頂に火口湖をたたえて裾野を大き
 くひろげている円錐状のかつての火山が全面の視野いっぱ
 いを占めていて、その4合目あたりから裾野が大傾ぎにか
 しぎつつこちらへひろがってきて、さらに背後へひろがり
 つづけ、ついに東京へいたるのだろうと思うと、空が落ち
 てきても大丈夫なひろさのようにおもわれた。

 (中略)

  ・ ・・その感じの中で萩原朔太郎をおもいだし、空だけ
 だったから詩人を生んだのだとおもったりした。京都周辺
 のような錯綜した山河でなしに、こういう空が大きすぎる
 下で、変化するものといえば雲の形や色だけという自然の
 中で少年の日々を送ると、想像力が際限もなくひろがるの
 ではないかとおもったりした。
  ・ ・・ともかくもこの日の上州の空は大きすぎ、なにか
 言葉でうずめないと歩いてられないほどであった。

              司馬遼太郎「私の関東地図」