僕は地平線に飛びつく
僅に指さきが引っかかった
僕は世界にぶら下った
筋肉だけが僕の頼みだ
僕は赤くなる 僕は収縮する
足が上ってゆく
おお 僕は何処へ行く
大きく世界が一回転して
僕が上になる
高くからの俯瞰
ああ 両肩に柔軟な雲
たしか国語の教科書にも載っていた。
村野四郎『体操詩集』から「鉄棒 2」という有名な作品。
1939年、ベルリン・オリンピック(1936年)の頃の出版ですが
まったく古さを感じないのは、無駄のない即物的な表現によるでしょう。
こどもだった僕らの鉄棒体験といえば「逆上がり」くらいだけど。
その「快感」が、ことばでこんな風に「表現できる」という驚き。
それは、クラクラするような詩の体験でもありました。
内村航平の「見ている世界」を、村野四郎のように表現したら。
いったいどんな「鉄棒」がうまれるのだろう?